はじめに:希望を握りつぶされた、あの日の絶望
「一生懸命働いて、いつか家族に誇れる自分になる」
新卒で入社したとき、私は希望に満ち溢れていました。真面目に、一生懸命頑張れば、結果はついてくるものだと信じていたからです。
しかし、ブラック企業が私に用意していたのは、サービス残業(No.1で語った不条理な仕組み)だけではありませんでした。もっと陰湿で、人の心を根元から折る「職場いじめ」という名の暴力でした。
これは、私が新卒22歳で体験した「いじめ」の実態です。もしあなたが今、同じように透明人間のような扱いを受けているなら、この話はあなたのためのものです。
1. 誰も取らない「鳴り続ける電話」の暴力
私の主な仕事は、受注対応や電話・メール応対でした。常に電話が鳴り続ける部署です。
定時を過ぎて打刻を済ませた後、フロアに残ってサービス残業をしていると、電話が鳴ります。
「プルルル…プルルル…」
電話応対の仕事は私の担当です。しかし、定時後に電話を取れば、当然ながらその残業時間が記録に残ってしまいます。会社は残業代を払いたくない。
だから、誰も取りません。
先輩たちは皆、下を向いて自分の作業に没頭しています。視線はPCに向かっていますが、彼らの耳にも電話の音は届いているはずです。
誰もが「自分が取ったら負けだ」という無言のルールに縛られ、電話を無視し続ける。この「誰も取らない」という行為こそが、新卒だった私には、自分一人が責任を押し付けられているように感じられる、陰湿な暴力でした。
2. 業務を止める「情報の遮断」
ブラック企業におけるいじめは、大声での罵倒だけではありません。仕事の根幹を崩す、巧妙な「情報の遮断」が最も心を蝕みます。
- 会議の「うっかり」招待忘れ: 重要な会議や打ち合わせの連絡が、私だけに故意に共有されない。
- 資料の共有漏れ: 最新の受注マニュアルや社内連絡事項が、なぜか私にだけ渡されない。
- 「言わなくてもわかるだろ」: 質問しても「そんなことも知らないのか」「自分で考えろ」と突き放され、ヒントすら与えられない。
これは全て、私が仕事でミスをするように仕向けるための行為です。ミスをすれば「あの人は仕事ができない」というレッテルを貼られ、さらに孤立する。この悪循環を生み出す構造こそが、ブラック企業が作り出す「いじめの土壌」でした。
3. なぜ先輩は「加害者」になるのか?
なぜ、優しいはずの先輩が、新卒の私をいじめるような行為をしたのでしょうか?
それは、先輩もまた、会社の仕組みによって限界まで追い詰められていたからです。
- 過剰なストレス: 自分の仕事が終わらない上に、誰かの残業を手伝う余裕などない。
- 教育体制の崩壊: 人を育てる時間的・精神的余裕がないため、新人に失敗させたくないという自己防衛が、苛立ちや無視に繋がる。
- 構造的な転嫁: 会社は「定時で帰れ」と建前を言い、残業代をケチる。その不満と負荷が、一番立場の弱い新人に転嫁されていたのです。
彼らは加害者であると同時に、会社の構造的な被害者でもありました。その連鎖の最終的な犠牲者が、私たちのような新卒や若手社員だったのです。
終わりに:その「痛み」はあなたが悪いんじゃない
陰湿ないじめの渦中にいると、誰もが「私が能力不足だからだ」「私が空気を読めないからだ」と自分を責めてしまいます。私もそうでした。
でも、違います。
あなたの価値は、鳴り続ける電話を無視する会社の構造でも、資料を共有しない先輩の態度でも、決して決まりません。
あなたの抱える痛みや、自己肯定感の低下は、会社が仕組んだ環境によるものであり、あなたが悪いわけではないのです。
次回の記事(No. 3)からは、この地獄のような状況を「冷静に乗り越えるための具体的な戦略」を公開していきます。この絶望を未来のための「踏み台」に変える方法を、一緒に学びましょう。
Panda


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