はじめに:心を蝕む、目に見えない不公平
前回の記事(No. 2)では、陰湿な職場いじめについてお話ししました。
しかし、ブラック企業があなたの心を蝕むのは、怒鳴り声や無視といった目に見える暴力だけではありません。もっと巧妙に、あなたの「権利」を奪い、自尊心を破壊する仕組みが存在します。
誰もが楽しみにするはずの公休や有給休暇。
- 「連休はすべて先輩優先」
- 「新人は年末年始は出勤が当然」
こうした不条理なルールによって、あなたは**「いるだけ無駄」**と宣告されるのと同じ精神的なダメージを受けていたのではないでしょうか。
これは、誰もが持つべき「休む権利」を、会社全体でどう奪い、私がどのように追い詰められたのかを告白する記事です。今、不公平な扱いに苦しんでいるあなたへ、「あなたが悪いわけじゃない。ルールがおかしいんだ」と伝えたい一心で書きました。
1. 権利剥奪:「先輩順」という名の不公平システム
私のいたブラック企業には、公休や有給の希望を出す際に、暗黙の、しかし絶対的なルールがありました。
それは「先輩順」です。
1.1. 真実のスケジュール予約戦争
社員全員が書き込む「公休・有給申請表」は、まさに社内カーストを映す鏡でした。
- 上位層(上司・古参の先輩): ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など、誰もが休みたいと願う日程を、数ヶ月前から堂々と予約します。
- 中間層(中堅社員): 上位層が取った残りの期間の中から、比較的マシな日を選びます。
- 最下層(新卒・若手): 誰も取らない「閑散期」や、連休の「中日(飛び石連休の平日)」など、もはや休みの意味をなさない日しか残されません。
私たちは「先輩に譲るのが当たり前」「新人は雑務をこなせ」という同調圧力によって、自分の予定を組むことすら許されませんでした。
1.2. 精神的なダメージ:「二級市民」の烙印
本当に休みたい日に休めないこと以上に辛かったのは、このシステムが自分に「二級市民」の烙印を押しているように感じたことです。
- 彼らは家族と旅行に行き、あなたは会社にいる。
- 彼らは十分な休息を取り、あなたは疲弊していく。
これは単なる不公平ではなく、「あなたの時間と人生は、我々の時間と人生よりも価値が低い」という明確なメッセージであり、徐々に自尊心を破壊していきました。
2. 休みをコントロールする「教育」という名の支配
なぜ会社は、このようなあからさまな不公平を許容し、時に推奨するのでしょうか?
この「先輩順」のルールは、「礼儀」や「教育」ではなく、社員の精神と時間をコントロールするための巧妙な支配手段でした。
- 従属心の植え付け: 「この会社にいる限り、あなたは常に下の立場で、権利は制限される」という現実を叩き込みます。
- 休息を奪うことで思考停止を誘発: 十分な休息が取れないため、冷静に自分の状況を分析したり、転職活動をしたりする「考える力」が奪われます。
- 退職の阻止: 「ここで反抗したら、休みすら取れなくなる」という恐怖感から、退職や権利主張への一歩を踏み出せなくなります。
会社側の都合の良い人材(長時間働く駒)を育てるために、最も重要な「休む権利」を人質に取っていたのです。
3. 不公平が心と体に与えた恐ろしい影響
権利を奪われ続けることは、直接暴言を浴びるのと同じか、それ以上に心を蝕みます。
私の場合は、以下のような症状が出ていました。
- 連休前の強烈な絶望感: 世間が楽しそうに連休を迎えるニュースを見るたびに、自分だけが置き去りにされたような強い孤独感と絶望感に襲われました。
- 慢性的な疲労と体調不良: 十分な休息が取れないため、疲労が抜けず、出勤前には腹痛や吐き気が止まらない日が続きました。
- 楽しめない休日: たまたま取れた休みの日も、「次にいつ地獄が始まるか」という不安で頭がいっぱいで、心からリラックスすることができませんでした。
最も辛かったのは、「自分の人生は、もう他人に決められてしまうのだろうか」という出口の見えない感覚でした。
終わりに:その不公平は、あなたが悪いんじゃない
もう一度、強く断言させてください。
不公平なルールで時間を奪われているあなた。あなたの人生の時間と休息は、誰かに譲るべきものではありません。
あなたの痛みは、あなたが我慢強いからでも、真面目すぎるからでもありません。会社が、正常な人間の心を壊す仕組みを作ったからです。
あなたが悪いのではなく、不公平なルールを作り、それを許している会社が悪いのです。
心を壊す前に、この場所から抜け出す必要があります。
次回の記事(No. 4)からは、感情論から抜け出し、「この会社を踏み台にする」という冷静かつ具体的な脱出戦略の全体像をお伝えします。
不条理な現実に絶望するのではなく、それをエネルギーに変えて、一緒に次のステップへ進みましょう。
Panda


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